『般若心経の科学』
祥伝社
科学者の視点から書かれた新しい般
若心経入門
「空」という表現は、「本当の自分自身」のひとつの呼び方なのではないか。仏教の従来の古典的な解釈とは違う発想からこの本は生まれた。本書では量
子力学や深層心理学のアプローチから、独創的にみた般若心経が綴られている。近代科学の仮説と般
若心経を対比させていくなか、両者の共通点を見いだしている。 般
若心経には詩的なリズム感がある。なかでも「ぎゃあてぃ・ぎゃあてぃ」のマントラ(音を重んじる祈りの言葉)は、「アーメン」同様に音訳されていない。強力な音の持つパワーが信じられているからだ。サイエンティストである彼が、「呪文の効用」を瞑想体験に基づいて大胆に認める内容もある。
デビット・ボームが提唱した「ホログラフィー宇宙モデル」とユングが提唱した「集団的無意識」が「あの世」を言っているのではないかと、かねてから指摘してきた天外伺朗。この観点から眺めると、般
若心経の「空」についても同じことが言えるのではないかという。「私」と「あなた」が溶け合い、すべての人や物質が渾然一体となってたたみ込まれているあの世。そこではすべての人の考えや想念もひとつとなって空間や時間もたたみ込まれている。般
若心経で説いている悟りは「全宇宙と一体になる」こと。これは「空」を知ることと同じだという。
科学者プリブラムの言葉「脳の記憶がホログラフィー的にたたみ込まれていることを発見したけれど、じつはこれは、脳に限定された話ではなく宇宙全体もまたホログラフィー的な構造になっている。脳も、宇宙の変型した一部分。」などから、われわれの見える宇宙の他にあらゆる物がたたみ込まれた「もう一つの宇宙」が存在していると導いていく。
細分化される学問の、それぞれの仮説を突き合わせて真理を追求していく王様。科学的見地からのアプローチで、般
若心経の内容がより輝いて見えてくる1冊。
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