『宇宙の根っこにつながる人々』
サンマーク出版刊
物理学者デビッド・ボームの「あの世」の概念と、ユングの提唱する「集合的無意識」の概念は、たいへんよく似ているというのが、著者の気づきの出発点である。しかも両方とも時間を超越しており、東洋哲学の宇宙観、仏教観に類似している。「色即是空、空即是色」、つまり目に見える「この世」と、時間も空間もたたき込まれた目に見えない「あの世」が表裏一体となって、ひとつの宇宙を形成しているらしい、というのである。したがって、人間の本質は、宇宙そのものであり、神そのものらしいと。
そうした試論から著された前著『宇宙の根っこにつながる生き方』に続き、ここでは、宇宙の根っこにつながったと思われる人々を取りあげながら、そのプロセスを具体的にたどることで、どうすれば人々は宇宙の根っこにつながることができるか、ガイダンスを試みる。
これまでの物質や効率にとらわてきた生活から、私たちが本当の幸福を求めるとき、必要なものは「愛」であり、「許し」であり、「祈り」だという。企業戦士であった著者自身が、自らの体験を顧みながら、たしかに多大な困難を伴うが、それを超越して平安に到達するしかないという、心境をも吐露している。
そして、やはり猛烈ビジネスマンから癌を患い、癒しのメッセンジャーになった人や、現代文明の警鐘を鳴らし続ける先住民族たちの活動を紹介する中で、「許し」と「祈り」の効果
に言及していく。
また、著者は宇宙の基本は愛だと直感。宇宙が全体としてひとつの生命体であり、その基本が無条件の愛だとしたら、そこは何ともいえないほど居心地のいいところであり、すばらしいところである。私たちは、そうした居心地のいい「あの世」から、セパレーションが起きて「個」となり、「この世」に生まれてくる。それは苦しみの極致ではないか。仏教の説く四大苦「生老病死」の中に、「生」が入っているのはそうのせいだと思いあたる。
そんな折り、フランスの産婦人科医ミシェル・オダン博士との出会いを通
して、著者の関心はやがて出産へと至る。胎内にいる赤ちゃんは、「あの世」のようにすべてと一体ではないが、少なくとも母親とは一体である。母親の愛は、純粋な無償の愛であり、宇宙の愛とも言えるが、それは赤ちゃんを生むという行為によって、宇宙の愛が母親を通
して子供に注がれる仕組みになっているからだ。したがって、産み方と、出産後のスキンシップがいかに重要な意味を持つかを力説する。
また、天外伺朗氏は、死の捉え方を変えることで生き生きと生きられることを提唱し、マハーサマディ研究会(理想的な死に方を考える会)を主宰しているが、その仲間たちを通
して、現在の病院のあり方にも疑問を持ち、理想的な病院構想(ホロトロピック・センター構想)を立ち上げている(『こんな病院が欲しい』毎日新聞社刊)が、そうした昨今の活動プロセスについても、ここで再び言及している。
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