ホロトロピック・ネットワーク天外伺朗の部屋(慈空庵)著作>『意識は科学で解き明かせるか』    
 

Copyright(C)
Holotropic Network
All Rights Reserved.
   

『意識は科学で解き明かせるか』
講談社ブルーバックス

 「脳科学をやっている立場から言えば、脳を物質として扱っているかぎりはいいのですが、心を科学的な学問の対象にしようとすると、非常なアレルギーがある。科学者は90パーセント以上の時間は、ふつうに物質的に脳を扱って、最後の最後に『ところで意識は不思議ですね』とか『そのうちに解きたいですね』というんですね。それに正面 から取り組もうとすると、そこにタブーがまだある」と、語るのはケンブリッジ大学生理学研究所や、ソニー・コンピュータ・サイエンス研究所で活躍する脳科学者の茂木健一郎氏の言葉。脳科学は意識や心についてまだ手をつけられないでいるという、その発言に驚いた。そこで天外伺朗氏は、自由意志、意識の問題は、量 子力学が発展することにより解けるはずだと語る。
 これまでのざまざまな学者の理論は、大きく実存主義と実証主義に分かれるが、それをわかりやすく解説しながら、そこに心理学や仏教への橋を架けながら、天外氏独自の仮説に誘導していく。また天才科学者たちが「ひらめき」でポイントに気づいていく例を挙げながら、これまでの近代科学が「内観的な方法で得た知識はいっさい認めない」立場に対して、その重要性を示唆している。内観によって仮説が出てくるし、その仮説を努力して検証していくのがサイエンティストの役割だとも言う。
 本書によって、近年の科学史のなかで何が論じられてきたかがよくわかるし、またそこから21世紀の科学革命が読みとれる。