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2001年02月『目に見えない流れに乗る』

   〜 風 〜
  あのトンビを見てごらん
  翼をピンとのばしたままで
  目には見えない気流に乗って
  ぐるぐるぐるぐる昇っていくよ
  あちらのカラスはせわしなく
  翼をばたばた動かしているが
  いつのまにやら手抜きのトンビ
  はるかに高く飛んでいる
  それを見上げてカラスは嘆く
  オイラはこんなに努力してるのに
  怠惰なおまえがなぜ高い
  ピーヒャラ、ヒャラ、ヒャラ、トンビは鳴いた
  筋力トレーニングするのもいいが
  風と仲良くしてごらん
  翼で風をたたいていないで
  ゆったり風に抱かれてごらん
  おまえに命があるように
  風も命の舞を舞う
  カーカーガーガー怒鳴っていないで
  耳を澄まして聞いてごらん
  あの、風の囁きを……
  あの、風のかすかな笑い声を……
  あの、風の喜びの歌を……

 カラスは一所懸命羽ばたいているけれど、トンビはまったく羽ばたくことなく上昇気流に乗っている。この詩はどこでも見られるそんな光景をうたったものです。

 上昇気流が実際あることは、みなさんご存知でしょう。地面 が熱せられて泡のように空気があがっていき、その中で旋回していると、ひじょうに高くまで上がっていきます。私は昔、グライダーパイロットだったので、上昇気流の中でよくトンビと競争して旋回していました。

 上昇気流の中でトンビはひじょうに楽にグルグル回っているように見えますが、じつは上昇気流の中で旋回していると、あっという間にはずれてしまいます。上昇気流の隣は下降気流がありますから、たちまち下降気流にたたき落とされてしまうのです。ですから上昇気流を保って旋回し、いちばん強いところへ徐々に入っていかなければなりません。それをセンタリングといいます。センタリングはものすごく難しくて、そのテクニックはいろいろありますから、グライダーパイロットは一生懸命それを学びます。じつは上昇気流で登っていくことも、羽を広げて何もしないわけではなく、その努力はバタバタ羽ばたいているだけとはちょっと違うというのがポイントです。

 じつは、我々の人生もまったく同じで、そういう目に見えない上昇気流のようなものを見つけると、順調にスムーズにいくし、外から見ていると、運命がその人の味方をしているように見えます。ところが、そういう流れに乗れないと、いくら努力してもうまくいかないということがあるわけです。そういうことをほとんど人が感じていると思います。

 では、どうしたら、そういう見えない流れに乗ることができるでしょうか。あるいは、見えない流れを見つけることができるでしょうか。そのコツがわかれば、いい人生を送ることができます。努力なしというわけではないのですが、いわゆるバタバタ努力しなくても、スムーズに人生を泳いでいけるでしょう。

 我々はいろいろな目標を作ったり、いろいろな計画を作ったりして、それを達成するというような生き方をすべく教育を受けてきています。幼稚園のころからこれまでずっとそうで、とくに会社に入ってからははいろいろな方法でそういう教育を受けています。それをプロジェクトマネジメントといいます。プロジェクト全体を細かいプロセスに分け、それを時間軸方向に計画を作って、どこにどのくらいにエネルギーをかけるか、あるいは計画がうまくいくのを阻害する要因は何か、あらかじめ分析し、そういう対策を打ちます。そういう仕事の進め方をやってきています。

 人間というのは自由意志というものがあって、その自由意志によっていろいろなことがコントロールできるという前提のものとに、計画を立てたり目標を作ったりしています。ところが、コントロールできることと、コントロールできないことがあり、我々はコントロールできないことがあることもよく知っています。そしてコントロールできない場合は、ふつう偶然の産物だと考えます。

 ところが、どうもそういう一般的な合理的な考え方ではなく、もう少しデフォーカスしてものごとを眺めると、必ずしもそういうことにはなっていないようです。冒頭に言ったように、我々が立てる計画とは別 に、もっと大きな計画があり、もっと大きな流れが蕩々と流れていて、それが見えてそれに乗っていくとうまくいくし、それに乗れないとうまくいかないということが確実にあるようです。

 どうしたらそれに乗れるか、どうしたらそれが見えるかというのは、正直言って私自身もわかっていません。自分でもうまく乗れたときもあり、うまく乗れなかったときもあります。それは何が違うんだろうと考えてみると、やはり自分のエゴというか、インテンション(意図)、ああしたい、こうしたい、コントロールしたいという表面 的な意志の力が強いと、そういう見えない流れに逆に乗りにくくなります。あるいは見えない流れが見えなくなってしまいます。

 要するに、自分のエゴの方が強すぎて、見えない流れが見えなくなってしまうということが、どうもあるような気がするのです。ですから、どちらかというと、体の力を抜いて心も楽しんでゆったりして、全体的にうまくゆるんでいる状態のときのほうが、見えない流れに上手に乗れるし、どこかに力が入っているときには、うまくいかないような気がするのです。

 私はこれまで会社で約37年間働き、プロジェクトの数でいえば3000くらいのプロジェクトを見てきました。自らやってきたものもあるし、マネジメント、スーパーバイズするかたちで見てきたものもあります。だいたいそのプロジェクトがうまくいくかいかないかというのは、プロジェクトの内容を聞くよりも、プロジェクトの進行を決める会議に出席するとわかります。メンバーがリラックスしてジョークを言い合っている、卑猥のジョークも飛び交うような会議は、うまくいく可能性が非常に高いのです。

 それに対して、これは絶対に成功させるんだといって、ねじり鉢巻きでもって力瘤が入っているプロジェクトは、どこかでバタンとひっくり返ることが多いような気がします。これは私の経験から言っていることですが、力を抜いている人の方が上手に流れを見つけるし、上手に流れに乗っていけるし、力瘤が入っている人は、その流れが見えなくなっています。自分の力瘤が邪魔をしてしまうということなのではないか、ということを常日頃考えています。

 では、どうしたら力が抜けるか。これはいろいろな方法がありますが、たぶんそれに対していちばん有効なのは、瞑想をすることなのではないかと思います。朝晩30分規則的に瞑想することによって、見えない流れが見えるようになってくるし、流れに乗れるようになるし、人生がスムーズになるのではないかと思うのです。

 今年の4月頃には『宇宙の根っこにつながる瞑想』という本を出しますので、楽しみにしていてください。