2002年01月『新しい病院、ホロトロピック・センターが佐賀でオープン』 |
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12月8日の土曜日、九州の佐賀で大きなイベントがありました。YHC矢山クリニック・オープニング記念講演会が開催されたのですが、今日はその話をしたいと思います。
まず、YHCというのは何かというと、Yは佐賀のやまとという地名で、HCというのは、ホロトロピック・センターの略です。ホロトロピックというのは、じつは私が提唱したものです。99年に『こんな病院が欲しい』という本を毎日新聞社から出し、そこでホロトロピック・センターという概念を提唱しました。
それは病院に変わる次の施設というか概念ですが、ホロトロピックという言葉は、トランスパーソナル心理学という新しい学問を作った立役者の一人である、スタニスラフ・グロフという心理学博士が作った造語で、「全体性に向かう」という意味を持っています。全体性に向かうというは、何のことかよくわからないと思いますが、じつは仏教でいう「悟りに向かう」というのと同じように、人間の意識がどんどん成長し進化していって、最終的には宇宙全体に溶け込んでいくようなことを表しています。
グロフはもともとチェコの精神科医で、LSDを使って精神病の治療していました。分裂病の治療などにはひじょうに大きな成果
を上げていたのですが、その後アメリカでその治療を続けていたときに法律でLSDが使えなくなり、そこで世界中の先住民のシャーマンの方法を研究して、15年かかってひとつの方法を編み出したのです。それをホロトロピック・ブレスワークと名付けています。
それは呼吸法と音楽とボディワークを組み合わせて、LSDを使わなくても変性意識状態に誰でも入れるという方法です。いろいろな悩みを抱えた人々に、セラピー手法として普及していますが、単に悩みを解決するだけではなくて、意識がどんどん成長進化し、いずれは悟りに近いところまで行く方法です。
私は病院に変わる新しい施設のことを考えたときに、この言葉がいちばん適切だろうと考え、98年にグロフ博士が来日した際に、この名前を使う了承を得ました。病院というのは病気になった人が治療をするための場所ですから、基本的に病気になったときだけにかかわり合う施設です。ホロトロピック・センターは、それとは異なり、生まれてから死ぬ
までずっと関わり合う場所です。したがって対象者は病人だけではなく、すべての人です。
そして病気の治療をしてもらう代わりに、健康で豊な人生を送るために、いろいろなかたちでサポートします。基本的にはなるべく病気にならないような、健康維持のサポートをまずします。もちろん病気になったらそこで手当もしてもらいます。人間を全体に見るという視点から、体だけではなく、心、環境、人間関係など、そういうものを全部ひっくるめてケアしていくわけですが、病気に対する考え方も、これまでの病院とはちょっと違います。
これまでの西洋医学では、病気をあたかも車の故障のように考えてきました。車の場合には、どこか部品が壊れると故障するわけで、それを交換すると修理は完了します。体も臓器などどこかが故障して、それを補修してあげると治るというのが今までの考え方でした。
ホロトロピック・センターでは、病気になったということは、何か特有な問題があるのではないかと考えます。いまは生活習慣病ともいいますが、たとえば生活の習慣が悪いというのもひとつのメッセージと捉え、その生活習慣を直すことによって、単に病気を治すだけではなくは、その次の病気にもかかりにくいということがあげられます。あるいは心の持ち方もあるでしょうし、そういうことも一緒にケアしていくというところです。
それがさらに進めば魂のケアがあります。魂という言葉はひじょうにややこしいので、私はなるべく使わないようにしていますが、要するに、意識が成長進化していくことを病気を通
じて、進化のプロセスをまっとうしていくということも必要なわけで、そういうこともやっていきます。
また、今の病院、あるいは今の医療システムの中には、死ということが入っていません。これはどういうことかといいますと、死は医療にとって敗北ですから、どうしても死を避けようとする医療が行われています。集中治療室に送り込んで1分でも1秒でも命が長らえるようにします。したがって意識あるままの尊厳ある死が、病院ではなかなか迎えられにくくなっています。それはホスピスではケアされますが、一般
の病院ではなかなかできないのが実状です。人間の死亡率は100パーセントですから、死の扱い方が大事です。
もうひとつは、出産においても大きな問題があります。本来の自然な出産方法があるのですが、いまはそれも病院の効率の犠牲になっています。したがって産婦にも、産まれてくる赤ちゃんにも、大きな問題を起こしています。受胎直後からいろいろなケアをしていくことが必要になるでしょう。
というような6つのケア、身体のケア、心のケア、健康維持のケア、魂のケア、死のケア、受胎・出産・新生児のケアをやりながら、生まれてから死ぬ
までケアしていくのがホロトロピック・センターのコンセプトです。
そのホロトトピック・センターの1号店が、まさに12月12日開院したわけですね。私がなぜこういうものを提唱したかというと、今の医療システムというのは、明らかに破綻していると思うからです。国民健康保険が昭和30年代に施行され、当初は素晴らしいシステムだと思われたのですが、じつは構造的な欠陥がありまして、年を経るに従って、そのひずみが増幅されてきてしまいました。
以前は、医者は患者から直接治療費をもらっていましたから、その治療費をなるべく安くしようという意識がお互いに働きましたが、いまは治療費は別
のところから保険として支払われます。そこでお医者さんが余分に薬を出せば、病院も儲かるし、製薬会社も儲かるし、患者さんも得したような気になります。それでたくさん薬を出してくれるお医者さんがひじょうに流行る状態になっています。
それは一見、みんなにとって良いことのように見えます。最新式のピカピカな装置で検査してもらえば、患者も喜ぶし、病院も医療機器メーカーも儲かります。必ずしも必要でない検査もどんどん行われていきます。手術にしても同様で、本当は手術しなくてもいいような場合でも手術は行われます。出産の場合にはそれが顕著で、健康保険施行前には帝王切開の確率が1パーセント以下だったのが、いまほとんどの病院では10パーセント以上になっています。30パーセント以上の病院もあります。その間女性の体がたいして変わったわけでも、環境が変わったわけでもありませんから、あきらか過剰医療です。
また、自然分娩で産むとなるとひじょうに手間暇がかかるにもかかわらず、産院の収入は最低です。ところが帝王切開をすると、医者の勤務時間にすべてが終わり、リスクも少ない。おまけに異常分娩ということで、保険も降りてしまいます。したがって帝王切開が増える構造になっているのです。それが指数関数的にどんどん膨らんできて、いま30兆の巨大な産業になっています。
この30兆円で20万人弱の人々がいま生活しています。今のような過剰な医療を取り除いて、本当に必要な医療だけをしたらどうなるか、おそらく確実に10兆円以下になると思います。そうすると何が起きるかというと、10万人〜12,3万人の人が失業します。ですから、そうなってはならないという力学が働いています。そこまで極端でないにしても、今の治療費が1パーセント減っただけでも、産業としてはパニックになります。
資本主義経済の中では、成長の中にいろいろなひずみが隠されていますから、企業でも何でも成長していかないとやっていけないという面
があって、病院によっては科ごとに収益を競わせるところもあります。そうすると、どうしても効率の高い医療をせざるを得ません。本当は患者との心の触れあいを持たなければならない医者が、なるべく患者との接触時間を少なくして、効率を上げなくてはその予算は達成できません。結果
的に、たくさん薬を出して、たくんさん検査をして、たくさん手術をしないとやっていけないという経済合理性を追求する医療になってしまいました。
経済合理性と、治療の対価としてお金をもらうというしくみが組み合わさって、加速度的に、指数関数的に膨らんでいったというのが、この30兆の産業です。お医者さんや看護婦さんというのはじつによく働いていますし、民間企業の管理職に比べて年齢が上がっても、過酷な労働を強いられているのが現状です。私生活を犠牲にして患者のために働いているわけですね。そういう生活をしていながら特別
に豊かとは言えません。
医療全体としてはひずんでいますし、病院や製薬会社の経営はけっこう厳しいのです。バブル的に膨れあがった30兆でみんなが幸せかといえば、みんな必死になっているだけで、何にもいいことはありません。それは基本的に、貨幣経済の中に医療を持ち込んでしまったことの結果
です。病気の治療の対価で産業を回していくという構造がおかしいわけですね。ホロトロピックセンターはそうではなく、病気にしないようにサポートするところです。
もちろん、病気になったときはそこで治療してもらえるわけですが、その代金は、基本的に会費の中から支払われるシステムです。ですから、病気にならない方がホロトロピックセンターが儲かるという構造にしたいと思っています。そうすると人々が病気にならないように一生懸命ケアするわけで、それは直接的に会員の幸福につながります。
病院というのは人の不幸に焦点を当てていますが、ホロトロピック・センターは人の幸福に焦点を当てているのです。そういうものが将来必要だと思います。そんなことを考えて『こんな病院が欲しい』という本を作ったわけです。それは8人で執筆しました。私を含めて2人は医者ではありませんが、あとの6人は全員医者です。そのうちの一人が矢山利彦さんで、今回最初のホロトロピック・センター1号店を作られたわけです。
いますぐホロトロピック・センターの理念どおり運営すればつぶれてしまいますから、最初は健康保険を使った普通
のクリニックとしてスタートしますが、もともと外科医だった矢山先生は気功家としてもつとに有名で、現在は東洋医学、代替医療の医者として確実に治療実績をあげています。そして徐々にホロトロピックセンターに変身していこうという作戦です。
12月8日の講演会では、矢山先生と私、そしてやはり本の共著者でありホリステック医学協会会長の帯津良一先生にも応援していただき、ほんとうに素晴らしい会になりました。会場も400人以上は入りきれず、立ち見が出る状態でした。
翌9日の朝は、出来立てホヤホヤの矢山クリニックにみんなで集まりまして、パイプセレモニーを行いました。前にもお話ししましたが、私はインディアンの長老から聖なるパイプをいただいて、パイプセレモニーというのをやっているのですが、それを是非やって欲しいということで、インディアンの儀式に乗っとってこの日やったのです。そのとき私がこれまでやったセレモニーの中でも、もっとも感動的なセレモニーができて、皆さんもたいへん喜んで下さいました。
じつは矢山先生は、開院前の忙しさや不安で、少しマタニティブルーになっていたそうですが、昨年、この聖なるパイプをいただく最初の儀式の際に私は、「これからの人生を人々の平安のために尽くします」と、うっかり言ってしまった話をしたら、矢山先生もこの日、「これからの人生を人々の健康のために尽くす」決心をその場でされました。そういう意味でもとてもいい日でした。
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従来の病院
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ホロトロピック・センター
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目的 |
病気の治療 |
健康で幸福で豊かな人生 |
対象 |
病人のみ |
すべての住民 |
対応期間 |
病気のときのみ |
生まれてから死ぬ
まで |
病気の考え方 |
身体システムの故障 |
宇宙との不調和のあらわれ
全体性に向かう大切なプロセスの一部 |
主な対応 |
(1)不快な症状の軽減
(2)病原部の除去・修復
(3)緊急処置
(4)検査
(5)体質改善
(6)メンタル・ケア |
(1)身体のケア
(2)心のケア
(3)健康維持のケア
(4)魂のケア
(5)死のケア
(6)受胎・出産・新生児のケア |
基本姿勢 |
延命 |
生のクオリティと死のクオリティをともに追求、ホーリズム |
経営 |
(1)病気の治療に対する対価
(2)国民健康保険制度に支えられている
(3)病人が多いほど儲か |
(1)健康で幸福で豊かな人生をサポートしてくれることに対する対価
(2)会員制(ホロトロピック・センター主体のローカルな健康保険制度)
(3)病気になる人が少ないほど儲かる |
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